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センター試験「国語」解説     (2010/01/18)



<第1問 評論>
 第1問は、一年生の現代文で学習した「マルジャーナの知恵」とほぼ同じ内容、つまり「差異」こそが資本主義の根本であるという文章で、しっかりと授業を受けた人にとっては、そこに「人間(の労働)」という要素が加わっただけだから、まずまず得点できたのではないだろうか。
 問2と問4は、文章の本筋の論理の流れがつかめていれば易しかったはずである。
 特色があったのは問3。これは1年生の時にやった「蹴ると痛いものから見えないもの(だっけ?)」という内容を覚えていれば、形のあるものではなく形のないものを選べばいいわけだから、①はまったくダメで、②は「通信機器」が形あるもの、③は「工業生産物」が形あるもの、④は「教材」が形あるものだから、結局⑤の「番組」が情報コンテンツということで正解になるのである。
 問5は正解の③の「利潤創出機構としての「ヴェニスの商人」という表現が、明らかに正解らしい「顔つき」である。日比谷の入試問題を作成する際にも、そういう選択肢は作らないように注意するのだが、これは「ヴェニスの商人」の意味の解説にもなっていて、ズバリ正解そのものである。
 問6は難しそうに思うかもしれないが、実はそれほど難しくない。というのも、最後の結論部分であり、文末をみても「~こそ…あったのである」と断定してるのはあきらかだから、まず(i)が決まる。(ii)は、この(i)があったおかげで、①~⑤まであるはずの選択肢が①~④と一つ減り、しかも、例年文章構成を聞く問6の選択肢は一つ一つの文が長いのに、これは短くなっていて、正解が選びやすくなっているといえよう。ここは落とさずに正解したいところである。

<第2問 小説>
 第2問は、文章そのものは読みやすかった。試験終了時に、「この小説を読んだことがあります」と報告してくれた立派な生徒もいて心強かったかったが、設問の方は微妙なものが多かったように思う。
 先ず、問1の(ア)は、②と④が微妙。(イ)は権化があるから④がよく、(ウ)が一番易しい。
 続く問2も微妙。傍線部の前に「具現化した感覚や純化した感情」=「枯れ草の匂い、斜めに射す入り陽、大きな哀しみ」が書かれているから①が正解だが、④と⑤にも「音→音楽」の変化が指摘されているので、迷ったかも知れない。
 問3は易しいが、問4は今一つピンとこない印象。親子が「初めて会った恋人同士」というのも変だし、この比喩にぴったりの解答がない感じである。ただ、消去法でいけば、②以外に正解はないだろう。
 問5も微妙である。この小説の前半は克久の物語で、後半は百合子の物語になっている。後半の物語文を考えると、②の選択肢がうまくできているのである。つまり、「百合子が息子の成長に喜びを感じる物語」でバッチリな印象を持つのである。ただし、「緊張感を悟らせまいとしている大人びた」が微妙。一方、④には「喜び」がないが、その分、残りの部分が文章の内容を過不足なく踏まえていて正解となる。①の「夫に似てきたことを感じる物語」ではないし、③の「克久を落ち着かせなければならない物語」でもない。⑤の「錯覚」もおかしい。
 問6は、③の経験した順にはなっていないし、④は「一本の地平線を見事に引いた」「木管は風になびく軍旗だ」などの隠喩が見つかるから、誤りだと判断できるだろう。

<第3問 古文>
 第3問は、二つの時間が描かれていることが読み取れただろうか。つまり、Cの歌のあとは、大将が姫宮を見初めた日の後日談である。
 問1は、ちゃんと品詞分解すれば容易。(ア)の「まぼる」は見守るの意。それに謙譲の補助動詞がついている。(イ)は「まみのわたり」が目元。(ウ)は「つきしろひ」が「つつきあって」。ただ、「つきしろふ」は単語集に出ていないので、これは間違える可能性はあるが、次の「煩ひ聞こえ」が「面倒だと思う」+謙譲の補助動詞だから、そこから正解にたどり着けたのではないだろうか。
 問2の「なり」の識別は授業で十分にやった。試験後、「授業でやったことを思い出しました」と言ってくれた諸君が何人もいた。
 問3と問5は、大将が「よろづのことに騒がず鎮まる御心」だということを読み落としていなければできるだろう。
 問4は超難問。私は最初、BとCを女御と帝の贈答だと読んでしまったので、Cの「朝顔」が大将をたとえているというのが間違えのように感じたのである。ただ、⑤もおかしいので、読み返してみて、Bが大将の歌なのだろうと考えることにしたが、これはかなり難問といえるのではないだろうか。
 問6は①と⑤で迷う。①は悪くないようだが、「帝が中宮のところにお泊まりになる」がおかしい。帝は、夜は清涼殿でお休みになるのだから、「下りさせ給ひけるままに」の主語は中宮である。

<第4問 漢文>
 第4問は、慣れない内容の文章だったとは思うが、注も参照すれば、盛唐の杜甫の詩を難しいと敬遠して、晩唐や宋・明の詩ばかり読んでいては、杜甫の詩を理解できるようにならないという例から始まる学問論だということは分かっただろう。問題には目新しいものもあったが、内容が読み取れていれば正解できたに違いない。
 問1 (1)の「ともすれば」と読めれば簡単。(本当は「ややもすると」という訓みであるが、要は「~モスレバ」に続けて読めればよい) ただ、この訓みは「明説」に出ていないので、いきなり面食らった人もいるかも知れない。(2)は下に「非」がある。
 問2・3・6はオーソドックスな内容理解の出題。問3は見た目が新しそうだが、比喩が読み取れたかというそれだけで、「高い山」=杜甫の詩、「近くの低い山」=杜甫の易しめの詩、「遠くの低い山」=易しい詩 が分かればよい。
 問4は、文脈から意味の(ii)を考えて①と決め、あとはそうなる読み方を考えればよい。「当」を再読文字で読むところは、いかにも「センター」である。
 問5は、新しく詩が出てきたりしてイヤになったと思うが、現代語訳を頼りにしながら消去法を活用すれば、何とか正解できたのではないだろうか。①は「蛍を批判的に」が、②は「修辞をこらして」が微妙で「あこがれ」はおかしい。③「蛍の~無情なさま」「望郷の思い」が、④は「同情的」「作者自身の消極的な人生態度」などが言い過ぎである。

●ということで、第1問は例年並み、第2問は例年並みかやや難化、第3問は難化、第四問は例年並みかやや難化といったところだと思います。よって、平均点は下がるのではないかと思います。