考えさせる・想像させる (2010/02/13)
*日比谷高校の「PTA会報」に駄文を載せました。授業にも関係することなので、ここにも掲載させていただきます。
授業でこんなことをやっている。
【問】次の空欄に適当な語句を入れなさい。そして、なぜ その語句を入れたのか、理由を簡潔に述べなさい。
A降る雪や( )遠くなりにけり
模範解答は、中村草田男の代表作の一つで、
○降る雪や明治は遠くなりにけり
である。句意は、時代のうつろいに対する感慨といったところか。で、生徒創作?の傑作は、例えば、
○降る雪や意識は遠くなりにけり
と、結構笑える。降りしきる雪をじっと眺めているうちに、なにやら目眩を感じた…というのが句意だそうである。この句については、さらに、
B( )明治は遠くなりにけり
という演習も可能で、草田男には感謝感謝である。
これは何も遊びでやっているのではない。Bでは季語の勉強にもなる(とはいっても、この句は季語学習にふさわしい教材ではないが…)。それ以上に、まず自ら表現を考えること・想像することによって、この句の解釈・鑑賞がグッと深まり、印象にも残るようになるのである。
最近出版された『大学生のための文学のレッスン~古典編~』(渡部泰明他編、三省堂)には、次のような演習が載っていた。
C「 」と話しかければ
「 」と答える人のいるあたたかさ
ヒントは、この会話で「あたたかさ」が感じられるという点。俵万智の『サラダ記念日』に入っているこの歌は、「寒いね」と会話する二人を描いて印象的であった。二つの「寒いね」をどう音読するかを考えるのも面白い。
授業で大切なことの一つは「考えること・想像すること」である。だから、教員は「生徒にどれだけ上手に・積極的に・深く・広がりをもって考えさせられるか、想像させられるか」を工夫することになる。その結果、うまく生徒の知的興味・関心を刺激することができればうれしいし、予想したほどの反応を喚起できずに終わればひたすら反省ということになるわけだ。
日比谷で授業を始めたころ、反省する機会がグッと増えた。生徒が興味・関心を示さないということではない、こちらの予想以上に興味・関心を示す諸君がいてくれたということである。そんな素晴らしい生徒たちの「考えること・想像すること」に向けて、先生方は日々研鑽しているのである(たぶん?)。