RAKUEN


SIGMA sd Quattro


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機械まかせにできないカメラ



 年末には「今年のカメラBEST3」を掲載することになると思うが、多分BEST1と2はFuji X-Pro2 とFuji X-T2 になるだろう(…と自分で書くのも変だが)。
 私は Fuji のカメラの写り(もちろんjpeg)が好きで Fuji を使うようになったのだが、今ではシャッターフィーリングや操作性なども含め、すっかり気に入っている。そして、使い込んでゆくうちに形状(カメラのデザイン)も好きになって、特に X-Pro2 のような、ペンタプリズム部分がないフラットなデザインのカメラが好みになってきた。写りにはまったく関係のない要素なのだが、私はカメラという機械そのものも好きなので、私のカメラライフ(とは大袈裟だが…笑)においては、デザインも大切な要素なのである。

 しかし、孫などが遊びに来た際などに、久しぶりに Canon 1DX を使ったりすると、やはりカメラとしての完成度・信頼感は、Fuji の数歩先を行っていることもひしひしと感じる。重くて大袈裟なカメラなのであるが、AFのスピードや扱いやすさ、測光やAWBの信頼性、高ISOでの安定した画質といった点では、二度と訪れないだろう貴重な時間を記録しようと思うと、機械に頼る部分が多い私レベルの素人としては、つい1DXに手が伸びることになるのである。

 そんな私が、「機械には頼れない」カメラを買った。SIGMA sd Quattro である。(→こちら
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 AFは遅いし、測光やAWBは信頼性に欠けるというのが大方の評価である。しかも、このカメラが採用する FOVEON という、他社のカメラが積むベイヤーセンサーとは異質な構造を持つセンサーは、高ISOに弱く(100しか使えないというのが大方の意見)、光の少ない状況にはさらに弱いという。動画が撮影できないのは当然で、jpeg 画像も仕上がりが今一つ、RAWを現像して見られる画像にするのが基本らしい。ところが、汎用ソフトでは現像できず、ダウンロードして使う SIGMA PhotoPro という唯一使えるソフトが、重くて重くて動作が鈍いというのである。
 これだけ聞くと、なぜこのカメラがあるのかという疑問が浮かぶが、この曲者センサー「FOVEON」 が、(うまく撮ると・写ると?)他とはひと味違った、高精細の、つまり、質感豊かな画像を生み出すからなのだそうである。
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 私は、昨年、同じセンサーを積むdp2 Quattro というレンズ一体型のカメラを、そのデザイン故に買った。カメラとしての性能については、まったく同じセンサーを載せているし、操作感、その他の評判も、ほぼ上述通りのカメラである。レンズ一体型なのでレンズ交換ができないが、その分、登載されているレンズにジャストフィットの調整がなされているとのことであるが、確かに使いやすいとはとても言えない代物である。
 ところが、このカメラで1枚だけ、自分では自分のベスト3に入ると思う写真が撮れたのである(キヤノンフォトサークルに投稿して掲載されたので、第三者からもそれなりの評価を得たのだと思っている)。
 それがこれ(大きな画像で開きます)。自分で言うのも何だが、いわゆる空気感が感じられるし、水面や草木の描写も素晴らしい…とは言えないでしょうか(笑)。
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 そんなこともあり、レンズ交換式として登場したこの sd Quattro を買ってしまったのである。
 もちろん、sd2 Quattro で撮った上のような写真を、さまざまなレンズを交換しながら撮ってみたいというのが第一の理由だが、それ以上に、そのボディ・デザインの虜になってしまったというのが大きな理由か。ペンタプリズム部分がないフラットなデザイン、しかも、レンズ・レガシーが活用できるようにと、ミラーレスにも関わらず大柄で、マウンド部分が突出したそのデザインは、もう一目見ただけで物欲を刺激するに充分な姿をしていたのである。
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 ミラーレス一眼だから、新たにレンズも揃えなければならないので一大決心だったが、8万円という予想を覆すバーゲンプライスと、そもそもSIGMA のレンズのファンだったこともあり、まずは30mmF1.4のレンズキットを買って、それに18-300mmという高倍率ズームを買い足した。このカメラの良さを出すためには、高倍率ズームでは物足りないのだが、とりあえず出費を抑えながら色々な被写体を試してみるには、これが一番だと判断したのである。ちなみに、WEB上に公開されたさまざまな sd Quattro で撮影された画像の中にも、このズームで撮った素晴らしい画像がたくさんあった。
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 さて、使い心地はというと、まさにウワサの通りで、要するにdp2 Quattro の使い心地とほぼ同じである。つまり、AFはのろい、jpegはくすんでいる、ちょっと光がなくなると途端に測光やAWBも怪しくなる…といった感じである。おまけに、すぐに熱くなって電源オフの要求が出るし、バッテリーの持ちもあまり芳しくない。液晶のファインダーも、画素数の割には Fuji などに比べてかなり見づらい印象である。つまり、機械としてのカメラの評価は、「まだまだ向上の余地が大きくある」とったところか。ちなみに、デザインの方は、ドイツのグッドデザイン賞に選ばれたりしていて、やはりなかなかのモノであることが感じられるし、実際に手にした感じも悪くない。
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 撮影した画像の方はどうかというと、撮りためたRAW画像を現像する作業が楽しくなってきた。こちらもウワサ通り、現像ソフトの重さといったらイライラがつのる感じではあるのだが、それでも気に入った画像を見よう見まねで現像していると、なぜだかかなり楽しいものがあるのである。まだ正しい現像のやり方も分からないまま、イイ加減な操作をしているのだが、操作にともなって画像が表情を変えていく様子を体験すると、その作業とそこから生み出される画像に何か心惹かれるものがあるのも事実なのである。ちなみに「sd Quattro にしか(FOVEONにしか)撮れない画像はこれだ!」というモノが撮れたという感覚はまったくないのだが…笑。
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 およそ汎用性はない(光がないとダメ、動くものはダメ…)し、私のような「数打ちゃ当たるjpeg派」とは正反対の撮り方を要求するカメラなのであるが、大切にとった画像を現像する楽しみと、カメラボディそのもののデザイン性によって、なぜか引きつけられるカメラであることは確かである。 
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2017-03-26



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