敬語の3-2-2-5-2-2(3年生向け)
夏期講習で「センター古文演習」を担当しているので、そこで話した敬語に関する勉強法について、その一部を報告してみよう。
ちなみに、センターで敬語が出題される時は、敬意の対象(誰に対する敬意か)を聞く問題が多かったが、2009年の本試験では、「誰から誰に対する敬意を示す○○語」という内容が出題された。つまり、敬語の基本については一通りの理解が求められているわけである。その勉強法の基本をまとめたものが、「3-2-2-5-2-2」である。
「3通り」の「誰に対して」(敬語の定義に関する勉強法1)
敬語は一般に「尊敬語・謙譲語・丁寧語」の3種類に区別されるが、すべて尊敬語であることを納得させた上で、その違いは、「誰に対して敬意を表すか」の違いであることを理解させる。
3 尊敬語= (その尊敬語の)動作をする人尊敬
謙譲語= (その謙譲語の)動作を受ける人尊敬
丁寧語= (その丁寧語を)聞く人尊敬
なお、この3つの区別は基本的に暗記による区別であり、文脈によるものではないことを知らせ、しっかりと記憶するように伝える。
「2通り」の「誰が」(敬語の定義に関する勉強法2)
誰が敬意を示しているのかは簡単で、敬語を使った人である。だから、次の二通りしかない。余計なことは考えないように伝える。
2 地の文= 作者(または語り手)
会話文(手紙文)= 話し手(書き手)
「2通り」の「訳し方の基本」
例えば「食べる」の尊敬語を考えると、「召し上がる」とまったく別の動詞に置き換えて表現する場合と、「オ食べニナル」と「オ~ニナル・オ~ナサル」といった語を添加して表現する場合があることが分かる。古典文法では、前者は敬語動詞ということになり、後者は敬語の補助動詞(助動詞=ただし、尊敬のみ)ということになる。これを起点として、敬語を訳す際、動詞と補助動詞(助動詞)では訳の作り方が違うことを理解させ、しっかりと記憶するように伝える。
2 本動詞= 一語・一語、「『おはす』は『あり・をり』の尊敬語で『イラッシャル』と訳す」などと記憶する。
補助動詞= 訳し方の公式を覚え、その公式を動詞に添加する。
▼尊敬語 オ~ニナル、オ~ナサル、
▼謙譲語 オ~申シ上ゲル、~サセテイタダク
▼丁寧語 ~デス、~マス、~ゴザイマス
「5つ」の「二つの用法を持つ敬語」
尊敬語・謙譲語・丁寧語の区別は基本的に暗記によるといったが、次の5語だけは2つの敬語の用法をもっているために、前後の文脈からどの用法か判断する必要が生じる。
5 ①給ふ(四段=尊敬・下二段=謙譲)*活用の種類や用いられ方で判断できる
②参る・③奉る 謙譲+尊敬
④侍り・⑤候ふ 謙譲+丁寧
「2通り」の「敬語の重なり方」
敬語が重なって用いられる場合、その骨格として重要になるのは次の2パターン。
2 尊敬語+尊敬語 二重敬語=非常に高い敬意を表す
▼その場で相対的地位の最も高い人に用いる
謙譲語+尊敬語 二方面への敬語=二人の人物に敬意を表す
丁寧語がからまってくる場合もあるが、基本の理解で重要なのはこの二つの重なりである。尊敬語+謙譲語といった順にはならないことも理解させておく。
「2つ」の「絶対敬語」
謙譲語・尊敬語の中に、決まった相手にだけ用いる語が2つあることを記憶させる。古文では、主語を決定することが重要である以上、特定の人物にしか使わない敬語が登場すれば、その人物がその場に登場することが分かるからである。
2 奏す= (天皇・上皇ニ)奏上スル
啓す= (皇后・皇太子ニ)申シ上ゲル
なお、名詞の尊敬語として、「御幸(行幸)=(天皇・上皇ノ)オ出カケ・オ出マシ」、「行啓=(皇后・皇太子ノ)オ出カケ・オ出マシ」があることも紹介しておくとよい。
以上、3-2-2-5-2-2というタイトルで、理解すべきこと、記憶すべきことを整理してみた。あとは、生徒諸君が記憶すべきことをしっかりと記憶してくれることを期待するだけである。
同時に、文法を理解したり記憶したりすれば古文が読めるようになるというわけではない。読み方のタクティクスや、文法知識の上手な適応法を、講習や授業で伝えていくわけである。