column2010-4

ラベンダー宇宙

light shower

パステル

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初めての交換レンズ選び

<二つの考え方>

 初心者が標準ズームレンズ付きのボディを買ったら、次にどんなレンズを買ったらよいのか?
 考え方としては二つあると思う。一つは、「カメラでしか見られない絵を創り出してくれるレンズ」を買うという方向であり、もう一つは、「とにかく便利なレンズを買う」という方向である。

<目では見られない世界>

 カメラを通して捉えることのできる「目では見られない世界」はいろいろあるだろうが、初心者のカメラマンでも簡単に体験できる世界といえば、「ボケ」の世界であると私は思う。そして、それが味わえるレンズが、①マクロレンズ ②開放値の明るいレンズ である。

 マクロレンズとは、小さな被写体を大きく写すことが可能になるレンズである。だから、一般に主題を大写しにする面白さが味わえるレンズと思われているが、単に焦点を合わせたモノを大きく写すだけでななく、それを強調するかのように、それ以外の部分が美しくボケる点が素晴らしいのである。この主題の拡大と周囲のボケがあいまって、独特の世界、「こんな世界が撮れるのだ!」という感動が味わえるというわけだ。
 具体的なレンズとていは、各メーカーで「マクロ」とされるものを選べばよい。どのメーカーのものも素晴らしいレンズらしい。焦点距離としては、50mmと100mmが代表になるが、被写体との距離がとれ、テーマも絞りやすい100mmが初心者向きと言われている。ボディに手ブレ補正がついていないメーカーの場合(キヤノン、ニコンなど)の場合は、手ブレ補正を備えたレンズがよい。
 ちなみに、デジタル一眼で映像素子がAPCサイズなら、焦点距離は1.5倍(キヤノンは1.6倍)になるので、60mmが90mm相当ということになるし、オリンパスやパナソニックのフォーサーズ規格では、焦点距離が2倍になるので、50mmのマクロが100mm相当ということになる。だから、60mmとか50mmと表示されているレンズが丁度よいということになる。
 カメラメーカー製以外では、タムロンのフルサイズ用SP AF90mm F2,8 MACROが定評がある。同じく、APCサイズ用のSP AF60mm F2.0 DiⅡ MACROも開放値が2.0と明るく、素晴らしいらしい。(ただし、当然のことながら、ピント合わせは難しいだろう)
 なお、APCサイズ用のレンズは、APCサイズの映像素子を持ったカメラにしか使えないが、フルサイズ用のレンズは、APCサイズ・フルサイズのどちらのカメラでも使える。

*なお、マクロレンズを使用する際には、三脚を使った方がよい。なにせ大写しにするわけだから、手ブレやピントのズレは目立つようになる。(それに注意するようになることで、写真の知識や技術が向上するのもマクロレンズのイイ所ではあるが…)。さらに、最近はライブビュー機能がついているカメラがほとんどなので、それを活かすためにも三脚は必須といえるのである。三脚の使い勝手は、使っているうちに色々と分かってくると思うので、最初は高価なものではなく、安価で軽くて小型なものを選べばよいだろう。一点注意するとすれば、「3ウェイ雲台」よりも「自由雲台」がついているものが使いやすいと私は思う。私はベルボンという会社の「シェルパ」という小型のものを使っているが、鳥撮りの時には、大型のレンズの重さに耐えられる「ネオ・カルマーニュ」である。

 次に、絞りの開放値が明るいレンズというのは、単焦点でいえばF1.2~1.8、ズームレンズならF2.8といった開放値を持つレンズである。ピントが合う面が薄いので、ピント合わせが難しいと言われている。最近のカメラの進化したAFでも、いわゆるライブビュー方式(コントラストAF)でないと、ピタッとはこないらしい。しかし、狙う部分をしっかり意識して写せば、焦点が合っている部分だけがクッキリとして、それ以外の部分がなめらかにボケる、我ながらうっとりとするような写真が撮れるようになる。(自己満足の世界であるが…)
 F1.8なら、キヤノンやニコンなどにも安価で手に入れやすく、かつボケが楽しめるレンズがある。その上のF1.4くらいが、性能と価格のバランスもよく、所有欲も満たしてくれるような気がする。さらにF1,2となると、かなり高価で別世界になってくる。私としては、シグマのAPCサイズ用30mmF1.4EX DCとフルサイズ用50mmF1.4EX DG HSMがお勧めである。

<便利なレンズ>

 私が初めてデジタル一眼を買った時は、実は標準ズームのキットではなく、ボディ単体に高倍率ズームレンズ(18‐200mm)をプラスして購入した。今では、キヤノンやニコンにも手軽な高倍率ズームレンズ(しかも手ブレ補正付き)が存在するが、私が買った2005年当時は、シグマとタムロンというレンズメーカー製のものしかなく、私はより小さなシグマのものを買った。一眼とは言っても、自分が頻繁にレンズ交換するようになるだろうとは思っておらず、それなら、広角から望遠まで一本で済むレンズにしようと思ったわけである。多分、鳥撮りに出合わなければ、今でもこの高倍率ズームレンズをメインに使っていたのではないかと思う。
 ただし、プロの方や写真教室などでは、先ず自分が動いて被写体と向き合うことが大切だということで、あまりこの手のレンズは勧めてはいないようだ。それに、そもそもレンズ交換を前提とする一眼では、本末転倒といったところもあるからだろう。
 しかし、初心者にとっては、この手のレンズで先ず色々な機会に写真を撮ることの楽しみを覚え、ある程度写真に慣れた段階で、単焦点の素晴らしさに触れるといったやり方もありだと思う。高倍率を使っているからこそ、単焦点の素晴らしさが分かるようになるといった面もあると思うからだ。(私もその一人であろう…)
 現在では15倍という高倍率レンズ(18-270mm)もあり、高性能な手ブレ補正が内蔵されているので、とても便利である。私レベルの写真を撮っている者がA4に印刷する程度なら、ほぼ充分な画質も確保されている。旅行の際には、荷物を減らしたいし、観光の途中でレンズ交換の時間がとれない場合もあるだろうから、そういう際にはこの高倍率ズームレンズはたいへん心強い味方になるのである。
 現在、APCサイズ用ならシグマの「18-250mmDC OS HSM」か、タムロンの「AF18-270mmDiⅡVC LD」、フルサイズ用ならタムロンの「AF28-300mmXR Di VC LD」に定評がある。APCサイズ用については、タムロンの方がちょっとだけ高倍率だが、画質的にはシグマの方がよいという評判を雑誌で読んだ。ちなみに、キヤノンにもEF28-300mmL IS USMという白レンズがあるが、値段は25万程度である。

<個人的見解>

 カメラ選びで書いたが、同じメーカーの中であれば、高いカメラだろうが安いカメラだろうが、出てくる絵に大きな違いはないということに現在ではなっている。多分、私レベルの人間が見ても、区別はつかないレベルになっているに違いない。例えば、単純に画素数だけでも、ニコンのプロ機であるD3Sは12.1メガピクセルなのに、初心者向けD5000は12.3メガピクセルである。もちろん、画素数が多ければイイというものではないが、一般的には高画素であればあるほど高精細な絵が撮れるわけだから、カメラ本体にお金をかければイイ写真が撮れる、というものではなくなりつつあるようである。
 では、レンズはどうかというと、これはもう「高価なレンズ=高画質のレンズ」と考えて構わない。例えば、<便利なレンズ>のところで挙げた「タムロンAF28-300mmXR Di VC LD」と「キヤノンEF28-300mmL IS USM」だが、同じ28-300mmという焦点距離の高倍率ズームでありながら、値段は20万円以上の開きがある。(ちなみに、望遠側の開放値は前者がF6.3であるのに対して、後者はF5.6と一段異なり、重さも555gと1670gとこれまた大きな差があるが…)この20万円の差は、ズバリ画質の差であって、これは同じ条件で撮影したものをパソコンの画面上で比較すれば、私でも見分けがつくレベルである。つまり、高価で重くてもイイ画質の写真が撮りたいのか、画質はある程度犠牲にしても、安価で軽くて便利であることに重点を置くのかの違いである。例えば海外旅行となると、前者を持って行くにはかなり勇気(と体力?)がいる。やはり後者を選ぶことになるだろう。
 で、何が言いたいのかというと、レンズ選びには色々な条件があるが、それを考えずに基本的な選び方の戦略を示すなら、「初心者は安いレンズ」と思い込まずに、できる範囲でお金をかけるべきだと言うことである。プロなら、ダメなレンズでも腕や知恵でカバーできるだろうが、素人だからこそ、腕のない分を高性能のレンズの描写力に頼る方がイイと思うのである。
 高価なカメラは使いこなすのが難しいが、高価なレンズは(大きく重くなるという欠点を除けば)使いこなすのが難しいということはない。(ただし、単焦点の明るいレンズはピント合わせが難しい部分もある…)初心者は「安い道具で」と思いがちだが、それは特定の分野を除いては誤った考え方だと私は思う。家電製品、例えばパソコンなども、初心者ほどレスポンスのよい高性能なものを買った方が何かと困ることがないに違いない。レンズに関しては、お金をかければかけるほど、味のある写真が撮れる。「ボディよりもレンズに金をかけよ」が私(…というか、世間でもきっとそうだろう)の結論である。

 なお、イイレンズを体験してしまうと、昔には戻れなくという危険性がある(笑)ことは覚悟しておく必要があろう。私は、キヤノンのLレンズを知ってしまった。28-300mmに関しては、旅行でもないかぎり、迷いなく1670gを選ぶ。そして、翌日の肩凝りに悩まされるのである。さらに、Lレンズといえども、28-300mmといった高倍率は使わなくなりつつある。F2.8通しのLシリーズ(16-36、24-70、70-200)や、F2.8の単焦点が欲しくて欲しくてたまらないのである。世に称する「レンズ沼」である。