4月

2015.04.30 (木)  晴れ

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2015.04.29 (水)  昭和の日 晴れ

 女子バスケ部3回戦の応援に出かける。今日は相手が強かった。外からの3ポイントも確実に決めてくるし、中に入ってはリバウンドもセットショットも強いとあって、ちょっと糸口が見いだせないままの敗戦であった。こちらにチャンスが回ってきても、早くて強いディフェンスを警戒するあまり、ちょっとずつ手からボールを離す瞬間が早くなってしまい、いつもなら決まるシュートも決まらずといった感じ。ただ、監督からの指示をキッチリ守ろうとする姿勢は最後まで失わず、自分たちなりのプレーはできていたと思う。2年生の活躍がめざましかった点も収穫か。
 昨日の朝日新聞夕刊の「人生の贈りもの」のコーナーに、私が尊敬する社会学者・上野千鶴子さんのインタビュー記事が載っていて面白かったので、引用しておこう。

■大学教師、なんていい職業!
――大学の教員になるのは1979年ですね。これは公募だったんですか。
 指導教授も女には就職を世話しない時代。公募に送っては落ちまくりで、ぎりぎり決まった京都の平安女学院短大は23通目の応募先でした。
――ともかく大学教師になろうと思ったのですね。
 食わなきゃいけないからね。はっきり覚えてるのは、25歳のときに地方新聞の求人欄を見てたら、「男子のみ」というのがズラーッと並んでて、「女子のみ」「男女とも」は、風俗かパチンコ店の夫婦住み込みしかない。「25歳、女性」なんてあてはまるところがどこもないの。
 まれに事務員募集なんてあると「珠算三級以上・簿記経験者」。私、ないじゃん! 自分が無芸無能で能力も資格も何もない年齢だけとった女だということに、初めて気がついた。もう選ぶ余地なんかないから、しょうがない、教師で食ってくかとなった。
――短大ではどんな授業をしたのですか。
 最初は専任講師で一般教養の社会学を教えたんだけど、学生は本も新聞も読まないし、授業も聞かない子どもたちでね。ただ本を読まない子がいいのは、権威主義がかけらもないこと。お客さんに合わせていくしかないと覚悟を決めて、専門用語も学者の名前も一切使わない社会学概論をやることにした。
――成功しましたか。
 反応が率直だからわかりやすい。優等生はつまらない授業も我慢して聞いてくれるけど、彼女たちは何を言っているかではなく、いかに言ってるかに反応する。その子たちに面白いと言ってもらえるのが、私の生きがいになった。私は教師として、彼女たちに実に鍛えられましたね。
――その後は京都精華大を経て、93年、東大に迎えられます。「権威に屈するのか」という批判も受けたとか。
 いっぱい言われましたよ。上野もとうとう体制に取り込まれた、とかね。自分の仕事で証明するしかない。ただ東大ブランドはずいぶん使いでがありましたね。社会教育の講師はずいぶんやったけど、東大に移ったとたん、教育委員会からお声がかかった。政府の審議会委員にはさすがに呼ばれなかったけど。
――東大の上野ゼミから、社会学や女性学の論客が多く出ました。研究の後継者も育てていますね。
 私は後継者とは思ってないの。ただ学生を指導するのは本当に面白かった。私は要求水準の高い教師で、「こんなものでいいと思ってるのか」と毎回真剣勝負をやってきたから、上野ゼミのテンションは高かったし、それを求める学生が集まってきた。
 私自身は学校を好きだったことも、教師を尊敬したこともないのに、結果として教師になってよかった。私は子どもを産んでいないし、育てたこともないのだけれど、目の前で学生が、竹が皮を破ってバリバリと音をたてるように育っていくのを見る。親も見られない場面を、教師だから見ていられる。なんていい職業かと思います。

 上野先生もおっしゃっているが、「東大ブランドはずいぶん使いでがあ」る。もちろん、ブランドが全てではない。ブランドは立派でも、中身が大したことなかったらどうしようもないが、ブランドを持っていて、しかも中身も優れているというのが素晴らしいのである。日比谷生諸君にはその「ブランド」を手に入れるチャンスが与えられている。手に入れられるのだったら、手に入れてみてはどうか。

2015.04.28 (火)  晴れ

 今日は遠足。とはいっても、担任がない人は旅費節約のため基本引率なし。そこで、休日出勤の代休をいただき、個人的に昭和記念公園に「遠足」に出かける(笑)。成果は「こちら」から。ちなみに、Hoto'sGallery を作成するのに使っているLightroom がアップデートされて「Lightroom CC」になり、WEBページのデザインはかっこよくなったのだが、スライドショーが楽しめるようにする設定の仕方が分からない。というわけで、とりあえず手動でお楽しみ下さい。
 夜の教育法は『徒然草』の模擬授業。模擬授業も2回目なので、学生諸君も「高校の授業」に慣れてきたせいか、イイ雰囲気で授業をすることができた。
 ということで、昼も夜も活動的?に過ごし、Apple Watchの「アクティビティ」のリングが始めて完成!
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2015.04.27 (月)  晴れ

 今日「は」(笑)よ~く働いた。朝~1限は午後の会議の資料作り。2~3限は3年生の授業、4限が進路部会、5限は1年生の授業。昼休みに夏期講習に向けた国語科の教科会、あいまに昼食。6~7限は国語科関係の重要会議。そして、放課後には金曜日に予定されている進学指導検討会に向けた事前校長プレゼンテーション。いや~、本当によく働いたなぁ…。11136歩。

2015.04.26 (日)  晴れ

 女子バスケ部の応援に出かける。前半は競った展開だったが、後半から自力を発揮して、10点以上の差をつけて快勝。ただし、いつもながらシュートミスが多いので反省しよう。次はシードの強豪校、いよいよ実力が試される相手である。
 久しぶりにiMacをいじっていたら、YOSEMITEの「写真」アプリが新しくなっていて、内蔵されている8つのフィルターが面白かった。オリジナル画像は、5DMk3 with SIGMA150-600mm Contemporary で撮影した昭和記念公園のポピー。ちなみに、SIGMA の新しい望遠の画質の高さにもビックリ。
5D3_0164.jpg(オリジナルファイル)
5D3もの.jpg(モノ)
5D3_0164 (2).jpg(トーナル)
5D3のあーる.jpg(ノアール)
5D3ふぇーど.jpg(フェード)
クローム.jpg(クローム)
プロセス.jpg(プロセス)
らんすふぁー.jpg(トランスファ-)
いんすたんと.jpg(インスタント)

2015.04.25 (土)  晴れ・曇り

 Apple Watchをつけてドライブ。クルマではブルートゥース接続でiPhoneの音楽を聴くのだが、その簡単なコントロールがApple Watchからできるので便利である。あとは特に利用法は思い浮かばないのだが、まあ、新しモノ好きなので仕方ない(笑)。大きさや重さも今まで身につけていた時計と変わりなく、違和感なく装着できる感じである。あとはバッテリーだろうなぁ…。
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2015.04.24 (金)  晴れ

 昨日は休更新日宣言した木曜日だったので更新しなかったが、生徒は健康診断日で、私も出張がなくそのお手伝い。前にも書いたが、「歯がよくて目が悪く、アレルギーが多い一方肥満が極端に少ない」というのが日比谷の(進学校の?)特色か。
 今日はコレが届きました。
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2015.04.22 (水)  晴れ

 久しぶりに朝陽と青空がまぶしい爽やかな一日である。
 気づかなかったが、こんな記事があった。(朝日新聞DIGITAL 3月24日)

 選挙権年齢を18歳以上に引き下げる公職選挙法改正案が国会に提出されたことを受け、若者の政治参加を促す団体「ティーンズライツムーブメント」が24日、国会内で、政策討論や模擬投票を行った。都内の高校生ら約70人が参加した。
 高校生らは、自分たちが政党を立ち上げた前提で政策を議論。「累進課税を強化し、年金を削減する」「ネットに影響されず、中国や韓国とうまく関係を作らなければならない」などと主張した。
 イベントでは、与野党9党の議員もあいさつ。自民党の船田元・憲法改正推進本部長は公選法改正案について「一日も早く国会で成立をさせたい」と約束。民主党の江田五月・憲法調査会長は「皆さんも責任重大。18、19歳に選挙権を与えたら投票率が10%なんてことにしないように」と訴えた。
 安倍晋三首相はビデオで「憲法改正や国政選挙への投票権(拡大)が着実に進んでいる。若い皆さんが声をあげ始めた結果だ」とのメッセージを寄せた。
 各党議員の演説を聞いた後、高校生ら56人が模擬投票も行った。福島瑞穂副党首が「二度と戦争をしないことを大事にしたい」などと訴えた社民党が20票を獲得してトップ。自民党は5票だった。

 こういうイベントに参加する高校生だから意識が高い集団なのかも知れず、一般的な結果とは異なるのかも知れないが、「福島瑞穂副党首が「二度と戦争をしないことを大事にしたい」などと訴えた社民党が20票を獲得してトップ。」というところに私は希望が見える気がする。実社会の様々なしがらみのない高校生が求めるものは、グローバル化などという美辞麗句に隠れた経済優先のアメリカ追随ではなく、平和国家としてグローバルな世界を生きてゆこうとする真摯な姿勢である。こういう思いが、「(70年談話に)同じことなら書く必要がない」などと言っている首相に届いて欲しいものである。過去を見つめて反省することは繰り返しなされるべきであり、つまり、繰り返し書かれるべきことである。反省は、反省する側が「もう十分にした」などと軽々に述べることができるものではない。相手が「十分に反省した」と認めることによってのみ、反省は反省としての意味を持つのである。そんな基本的なことさえ首相には理解できていないようだ。高校生の瑞々しい感性が日本の道を照らしてくれることを期待したい。9881歩。

2015.04.21 (火)  雨のち曇り

 夜の教育法は、20名で落ち着きそうな感じである。適正規模、しかも今年もやる気のありそうなメンバーばかりでよかった~。今日は現代文の模擬授業だが、今年は1年生の授業を持っていることもあり、その延長みたいな感じで出来たので楽した感じである(笑)。10875歩。

2015.04.20 (月)  曇り・雨

 月曜日は午前中に授業3時間+進路部会ということでかなり忙しい。しかも、来週からは午後にもはエンドレス?の会議が予定されており、ますますブルーマンデーになりそうである。
 ところで、チューリップというのは、どうしても低い姿勢で撮影することになる(つまり、スクワットしているみたいな格好で写真を撮る…)。そのせいか、昨日の午後から太ももが筋肉痛で、早く歩くこともできないし、階段の上り下りにも苦労する始末。寝る前にバンテリンを山ほど塗っておいたのだがあまり改善しなくて、今日は校内エレベーターを5回くらい使ってしまった。やれやれ…。8266歩。
 ps. 日比谷の教え子が東大新聞Onlineに記事を書いています。面白いので紹介します。「こちら」から。

2015.04.19 (日)  曇り

 バスケ部の春季大会の応援に出かける。2枚看板エースの一人が負傷中だが、外からのシュートがよく決まって快勝!安心して応援のできる試合だった。
 その後、恵比寿のイル・ボッカローネで大学時代の友人たちと会食。40年前!の話に花を咲かせて大笑い。持つべきものは良き友である。

2015.04.18 (土)  晴れ

 午前中、仕事。午後、昭和記念公園に出かける。チューリップが見頃を迎えているとあって、老若男女、日本人も外国人も大変な人出であった。その混んでいる通路に三脚を立てる、座り込む、寝転ぶ…といった最悪な態度の大部分は日本人のカメ爺たちであった。やれやれ…。最新のカメラは手ブレ補正もあるし、高感度性能が高まっているから、特別は撮影意図でもなければ基本は手持ちで撮影できるし、今日のような混んだ場所では手持ちで撮影すべきであろう。ご家族連れのベビーカーの道をふさぐような真似は最低である。そんなカメ爺だけにはならないよう自戒するのであった。
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2015.04.17 (金)  晴れ

 授業を見学にいらした先生が授業の後で、「まるで手品を見ているみたいでした」と感想を聞かせてくれた。手品のような一方的に主役となる授業をしたつもりはないので、「発問に沿って考えていくと、最後にハッとするような種明かしにたどり着いてワクワクした」というようなことをおっしゃりたかったのではないかと、よい方に超拡大解釈(笑)しているのだが、そういう感想を同じ教員仲間(つまりプロの方)から言っていただけるということは、やはりこの年齢になってもうれしいものである。7885歩。

2015.04.16 (木)  晴れ

 お知らせです…って、たいしたことではないのだが、今年は諸般の事情により、今日以降の木曜日の「日比谷の日々」は原則休刊にしたいと思う。詳細は述べられないのだが、まあ日比谷「で」の日々ではないから、というのが主な理由。意味深長?(笑)。ちなみに、日比谷とは関係のない「Hoto'sPhotos」の方はいつも通り更新いたします。

2015.04.15 (水)  晴れ

 朝は久しぶりの好天で朝日がまぶしかった。午前中は3年生の授業を2時間やった後、指導教諭としての模範授業!(および研究協議…)4回の計画を立案する。う~む。午後は1年生の授業1時間と進路の数字数え。8341歩。

2015.04.14 (火)  雨

 今日で今年担当する全てのクラスと顔を会わせ終わる。3年生が3講座、1年生が2クラスだが、どんな一年になるのだろう。楽しみである。
 夜の教育法も今日が今年最初の講義。昨年は10名と受講者が少なくてちょっと寂しかったが(その分仕事は楽だったが…笑)、今年は(去年と同じ7時間目だし)どうなるのだろうと思っていたら、なんと22名もの諸君が出席していてうれしいビックリ。月曜日の講座と迷っている諸君もいたので、二つの講座の違いを説明する。20名くらいが適正規模?なので、このくらいで一年間講義ができるとイイのだけれど。10786歩。

2015.04.13 (月)  雨

 月曜日は午前中4時間授業+進路部会で忙しい。おまけに、この時期は都教委その他に対する色々な報告書類の作成があって、卒業生+浪人生の進路関係に関しては一手に引き受けているのだが、エクセルのフィルター機能を活用してもなかなか数字が一致しなかったりして(現役生の部分はきっちりしているのだが、蝋人形の部分が…)結構大変である。午後いっぱいかかって、やっと一つを捏ち上げる。あと大きなモノが3つ。やれやれ。8581歩。

2015.04.12 (日)  晴れ・曇り

 家で過ごして話題なし。そこで、最近結構話題になっている「東大教養学部学位記伝達式」の式辞を、東京大学教養学部のホームページから全文引用しよう。信州大の学長の話(新入生向けだからレベルも異なるが…)よりはずっと読む価値があると思う。(ただし本当に長いですよ…笑)

 皆さん、本日はご卒業おめでとうございます。
 また、ご列席のご家族の皆様方にも、心よりお祝い申し上げます。今年度の教養学部卒業生は175名で、そのうち女性は50名、留学生が1名です。
 全学の式典はすでに午前中、改装されたばかりの安田講堂で挙行されましたので、ここでは教養学部として、あらためて皆さんとともにこの日を慶びたいと思います。

 東京大学の卒業式といえば、もう半世紀も前の話になりますが、東京オリンピックが開催された年である1964年の3月、当時の総長であった経済学者の大河内一男先生が語ったとされる有名な言葉が思い出されます。曰く、「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」。
 当時、私はちょうど中学校にあがる年頃でしたが、この言葉は新聞やテレビでかなり大きく報道されましたので、鮮明に記憶に残っております。また、子供心に、さすが東大の総長ともなると気の利いた名言を残すものだと、感心したこともなんとなく覚えております。皆さんの中にも、どこかでこの言葉を耳にしたことのある人は少なくないでしょう。
 ところが、これはある機会に一度お話ししたことがあるのですけれども、じつはこの発言をめぐっては、いろいろな間違いや誤解が積み重なっているんですね。

 まず第一の間違いは、「大河内総長は」という主語にあります。というのも、これは大河内先生自身が考えついた言葉ではなく、19世紀イギリスの哲学者、ジョン・スチュアート・ミルの『功利主義論』という論文からの借用だからです。
 東大の総長ともあろうものが、他人の文章を無断で剽窃したのか、と思われるかもしれませんが、もちろんそういうわけではありません。式辞の原稿を見てみますと、そこにはちゃんと、「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」と書かれています。「なれ」という命令ではなく「なりたい」という願望になっている点が少し違っていますが、それはともかく、ここでははっきりJ・S・ミルの名前が挙げられていますから、これは作法にのっとった正当な「引用」です。ところが、マスコミはまるでこれが大河内総長自身の言葉であるかのように報道してしまった。そして、世間もそれを信じ込んでそのまま語り継いできたというのが、実情です。
 次に第二の間違いですが、これはもっと内容に関わることです。じつは、ジョン・スチュアート・ミル自身は「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」とも「なりたい」とも、全然言っていないのですね。さきほど題名を挙げた『功利主義論』の日本語訳を見てみますと、こう書いてあります。
 満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。
 大河内総長の言葉とはだいぶ違いますね。ちなみに、英語の原文はこうなっています。
   It is better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates
   dissatisfied than a fool satisfied.
 この原文を見ると、どうやらさきほど引用した日本語訳は正確なようですから、大河内総長のほうがこれをまったく別の文章に改変してしまったとしか考えられません。たぶん漠然と記憶に残っていた言葉を、自分の言いたいことに合わせて適当にアレンジしたのでしょう。その結果、「満足した豚」は食べたいものを食べたいだけ食べるということで「肥った豚」になり、「不満足なソクラテス」は食べたいものにも安易に手を出さないということで「痩せたソクラテス」になったものと推測されます。しかしこれでは原文とまったく違ったニュアンスになりますから、ミルが語った言葉として紹介するのはさすがに問題なのではないか。下手をすると、これは「資料の恣意的な改竄」と言われても仕方がないケースです。
 ところが、間違いはこれだけではないんですね。じつは、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていないのだそうです。原稿には確かに書き込まれていたのだけれども、あとで自分の記憶違いに気づいて意図的に落としたのか、あるいは単にうっかりしただけなのか、とにかく本番では省略してしまった。ところがもとの草稿のほうがマスコミに出回って報道されたため、本当は言っていないのに言ったことになってしまった、というのが真相のようです。これが第三の間違いです。
 つまり、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけです。まず「大河内総長は」という主語が違うし、目的語になっている「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」というフレーズはミルの言葉のまったく不正確な引用だし、おまけに「言った」という動詞まで事実ではなかった。というわけで、早い話がこの命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね。にもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているという次第です。

 さて、そこで何が言いたいかと申しますと、まず、皆さんが毎日触れている情報、特にネットに流れている雑多な情報は、大半がこの種のものであると思った方がいいということです。そうした情報の発信者たちも、別に悪意をもって虚偽を流しているわけではなく、ただ無意識のうちに伝言ゲームを反復しているだけなのだと思いますが、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります。
 情報が何重にも媒介されていくにつれて、最初の事実からは加速度的に遠ざかっていき、誰もがそれを鵜呑みにしてしまう。そしてその結果、本来作動しなければならないはずの批判精神が、知らず知らずのうちに機能不全に陥ってしまう。ネットの普及につれて、こうした事態が昨今ますます顕著になっているというのが、私の偽らざる実感です。
 しかし、こうした悪弊は断ち切らなければなりません。あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。
 今朝の本郷での卒業式では、学生代表の文学部の学生さんが、答辞の中でたいへんいいことを言っておられました。私も今朝初めて聞いたばかりですから正確には再現できませんが、おおざっぱに要約すれば、「どんな言葉にも名前が記されている。たとえ匿名の言葉であっても、それを発した人間の名前は刻印されている。しかしそれで自己規制したり沈黙したりしてはならない。私たちは自分の名前において言葉を語らなければならない」といった趣旨であったと思います。
 まことにその通りで、これから皆さんが語る言葉には、常に名前が刻まれています。それは皆さんが普段名乗っているいわゆる「名前」だけでなく、東京大学という名前であり、教養学部という名前でもあります。ですから皆さんは、今後どのような道に進むにせよ、研究においても仕事においても、けっして他者の言葉をただ受動的に反復するのではなく、健全な批判精神を働かせながらあらゆる情報を疑い、検証し、吟味した上で、東京大学教養学部の卒業生としてみずからの名前を堂々と名乗り、自分だけの言葉を語っていただきたいと思います。

 ところで、もう一度「豚とソクラテス」に戻りますが、私ははじめてこの言葉を聞いたとき、子ども心に、どうして「肥った豚」か「痩せたソクラテス」のどちらかでなければいけないのだろうか、と不思議でなりませんでした。どうせなら「肥ったソクラテス」になればいいじゃないか、と思ったわけです。
 そこで大河内総長の式辞原稿をもう一度見てみますと、そこには例の有名なフレーズに続けて「我々は、なろうことなら肥ったソクラテスになりたいのですが」とも書かれていました。じっさい、ソクラテスであるためには必ず痩せていなければならないという道理はありませんから、この点では私もまったく同意見です。ただ、ぶくぶくと肥ったソクラテスというのもなんとなくイメージしにくいですね。本日の本郷での卒業式では、この3月末で6年間の任期を終えられる濱田総長が式辞の最後でとどめの「タフ&グローバル」を口になさいましたが、ここではその濱田総長と、半世紀前の大河内総長に最大限の敬意を表して、2人の総長の合わせ技で「タフでグローバルなソクラテスになれ」、と皆さんに申し上げておきたいと思います。

 さて、かく言う私も、この3月で教養学部長の任期は終了いたします。また、それと同時に、駒場の教員としても退職いたします。いささか恥ずかしげもなく月並みな言い方をすれば、今日は皆さんの卒業式であると同時に、私自身の卒業式でもあるわけです。人生のひとつの区切りを皆さんと一緒に迎えることができたというのは、何かのご縁かもしれませんが、ともあれこの壇上から式辞を述べるのも、これが最後の機会となりますので、私は大河内総長の「痩せたソクラテス」でもなく、濱田総長の「タフでグローバル」でもなく、自分自身が本当に好きな言葉を皆さんに贈って、この式辞を終えたいと思います。
 それはドイツの思想家、ニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくる言葉です。
   きみは、きみ自身の炎のなかで、自分を焼きつくそうと欲しなくてはならない。きみがまず灰
   になっていなかったら、どうしてきみは新しくなることができよう!
 皆さんも、自分自身の燃えさかる炎のなかで、まずは後先考えずに、灰になるまで自分を焼きつくしてください。そしてその後で、灰の中から新しい自分を発見してください。自分を焼きつくすことができない人間は、新しく生まれ変わることもできません。私くらいの年齢になると、炎に身を投じればそのまま灰になって終わりですが、皆さんはまだまだ何度も生まれ変われるはずです。これからどのような道に進むにしても、どうぞ常に自分を燃やし続け、新しい自分と出会い続けてください。
 もちろん、いま私が紹介した言葉が本当にニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくるのかどうか、必ず自分の目で確かめることもけっして忘れないように。もしかすると、これは私が仕掛けた最後の冗談なのかもしれません。

 皆さんの前に、輝かしい未来が開けますように。そして皆さんが教養学部で、この駒場の地で培った教養の力、健全な批判精神に裏打ちされた教養の力が、ますます混迷の度を深めつつあるこの世界に、やがて新しい叡智の光をもたらしますように。
 万感の思いを込めて、もう一度申し上げます。皆さん、卒業おめでとう。
 平成二十七年三月二十五日                 東京大学教養学部長 石井洋二郎

2015.04.11 (土)  雨・曇り

 バスケ部は来週からの関東大会予選に向けて練習。家では1年生の授業に向けて下調べ。

2015.04.10 (金)  曇り・雨

 今年の初授業で、3年生の古典を2時間と1年生の現代文を1時間。久しぶりなのでちょっと疲れたが、授業の方はどちらもなかなか楽しい雰囲気でよかった。3年生には、昨年学習した教材を使って、いかに復習が疎かか(つまり、いかにやった教材が身についていないか)ということを実感してもらいながら、これからの勉強法について説明する。1年生は(なにせ今日から授業開始なので)教材や評価の説明を中心に、最後に漢字の学習をちょっとだけやる。ちなみに、今年の日比谷の入試では「ボクヨウ犬」と「トウイ錠」がまったくできていなかったので、「僕用犬」「投胃錠」という名作?を紹介したりして、漢字力と語彙力を高めることの重要性を強調しておいた。8911歩。  
 キヤノンフォトサークルに写真が掲載される。タイトルは「夕方桜色」。ジャンルマスターのいだよう先生から「夕陽の色が桜の優しい色と調和して、暖かみのある空間を作りましたね。背景の光が強いのに、花弁が美しく描写されました。適切な補正が施されたと言うことでしょうね。」とコメントをいただく。Photoshopで露出補正したので、そのことを踏まえてのコメントである。
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 今日、あるモノの予約をする。ははは…。普通のタイプにスポーツバンドという最安の組み合わせである。

2015.04.09 (木)  曇り・晴れ

 昨日に続き寒い一日。2・3年生は今日から平常授業、1年生はオリエンテーション。たまたま今日も授業がなく、下調べや提出する書類の作成などをして過ごす。11919歩。
シダレザクラ=八重紅しだれももう終わり)
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2015.04.08 (水)  雨

 在校生と新入生の対面式。雨のため入場に時間がかかってしまい、会そのものの内容がちょっと寂しくなってしまって残念。その後、2年生は平常授業とホームルーム。3年生も午後から平常授業である。私は時間割の関係で今日は授業はなく、下調べをして過ごす。でも、ホントに寒かった~。10968歩。

2015.04.07 (火)  雨

 雨の入学式。その上ちょっと寒くなってしまって残念ではあるが、新入生諸君には関係ないだろう。それ以上に、在校生の部活勧誘の元気さには(ある意味)感心である(笑)。入学式での如蘭会会長の祝辞は、昨年とまったく同じ。ただ、新入生諸君にとってはやはりイイ話であると思う。興味ある方は、昨年の学級通信に内容を紹介してあるので「こちら」を。9883歩。

2015.04.06 (月)  曇り

 避難訓練+始業式+着任式+ホームルーム+宿題テスト。その後、新2年生は総合学習のガイダンスと明日の入学式準備。久しぶりに生徒の声が校舎にあふれていた。
 放課後、第一回の職員会議。今年は司会になってしまったため、ゆっくり居眠りも出来ない(笑)。年度当初で議題が多かったが短時間で無事終了。新着任の先生方の顔と名前がやっと一致する。11681歩。
 ありがちなニュースがあったので転載。(livedoor NEWSより)

 ミュージシャンのGACKTがパリのホテルで露骨な人種差別に遭い、そのいきさつを30日配信のブログマガジンに記した。
 GACKTはイタリアへの途次パリに立ち寄り、29日の夜は空港近くのホテルで1泊した。
 そして朝、1人で朝食を取ろうとホテル内のビュッフェに入った。
 他に誰も客はおらず、入口近くの眺めのいい席に腰を下ろすと、店員に奥の席へ行くよう告げられた。
 「外の景色が見たかったボクからしたら 入り口の景色が見える席が良かったな…とは思ったんだけれどな」
 仕方なく席を移ると、後から来た白人客が、GACKTがさっきまで座っていた席に着いたが、店員は何も言わなかった。
 そこまではGACKTもただ不思議に思っただけだった。やがてアジア人客がまた入り口近くの席に座ろうとしてGACKTの近くの席を指示され、次に中国人の団体客がやはり同じ目に遭った。
 奥の席はアジア系の客で埋まり、さらに入って来たアジア人は白人客の近くが空いているにもかかわらず入店を断られた。
 そこまで観察して、GACKTも「あははははははは。わかるか、これ?ものすごく分かり易い差別だよ」と確信した。
 「まさか、自分がこんな風にあからさまに差別を受けるとは思っても見なかったから大ウケだよ」とあきれて笑ってしまうGACKT。ただ、そのままで引き下がりはしない。
 いったんビュッフェを出たGACKTは2分後に再入店、今度は入り口近くの席に座った。
 店員が飛んできて「向こうに座れ」と“アジア人席”を指差した。しかしフランス語をしゃべれるGACKTは笑顔で「なんでだ?分かり易いように説明してくれ」と要求した。
 店員が口の中で何かモゴモゴつぶやいたので「大きい声で、わかりやすく言ってくれ」と再び説明を求めた。店員はあきらめて去っていった。
 GACKTは感情的になったわけではない。「ムカついたら何か変わるわけじゃないだろ?ムカついて文句言って何もしないのは、愚の骨頂だよ。だったら、笑ってサラッと行動した方が意味があると思わないか?」と、あくまで冷静に振る舞った。
 そして、マナーの悪い中国人団体客もいることを指摘、ホテルの方針について「誰がマナーがまもれて、誰がマナーがなってないなんて、瞬時にわかるわけがない」から肌の色で“区別”したのだろうと思い浮かべた。
 その上で「最近の日本人もマナーのないヤツが多いだろ?国の問題じゃない」と、この体験を単に差別問題として片付けはしなかった。
 パリでは今年2月、地下鉄に乗ろうとした黒人男性がチェルシーの白人サポーターたちに乗車を妨げられ、その様子が報じられて世界的なニュースとなった。

 主人と旅行していて似たような経験があるが、「外が見える席に座りたいのだが」と(主人が…笑)にこやかに由緒正しい英語で要求すると、ちゃんと座らせてもらえるのが普通である。まあ、上品な(?)熟年の夫婦二人だからかも知れないが、GACKTが指摘しているように、(マナーの悪い日本人も勿論いるのだろうが)圧倒的に中国人ツアー客の影響が大きいのではないかという印象を持つ。これからは海外にいっても不快な目に会うことが増えるのだろうか…。

2015.04.05 (日)  曇り

 雑誌「考える人」の2015年春号の特集は「数学の言葉」ということで、ポリーニ演奏のバッハ「平均律クラヴィーア曲集」を聞きながら読書三昧。「ロボットは東大に入れるか」の新井紀子国立情報学研究所教授のインタビュー記事の中に、コンピュータでセンター試験の国語問題を解かせる際、「文字列に対してある距離を定義して、傍線部と選択肢との距離を測り、いちばん「近い」ものを選択」するようにしたところ、偏差値54までいっているとあって、いったいどういう「距離」を定義したのか、極めて興味深く思った。同じ記事の中に「距離について三つのことが考えつく。まず、すべて距離はゼロ以上という前提がありますが、一つめは、全く同じものなら距離はゼロですということ。二つめは、xからyへの距離と、yからxへの距離は同じですと。三つめは、これがすごく重要なんですけれども、、三点のうち、xからyに行くのと、zを経由して行くのだったら、xからyへ真っ直ぐ行った方近い。どうやってもこの三つで規定されるものを距離と言う。この距離dというのは数値化されうる。」とあって、まあ当たり前のことだが、こうやって概念化することで数値化が可能になるわけで「へぇ~」と感心させられるのであったし、偏差値54の秘密の在処のような気がして面白かった。
朝食は手作りイチゴジャムと生クリームを載せたパンケーキ。カロリー高そう…)
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2015.04.04 (土)  曇り

 用事があって出かける家族を羽田空港まで送っていったり、授業の下調べや担任としての準備に忙しい主人に代わって買い物に出かけたりと、人のために尽くした一日(笑)。合間に読書。
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本日はトマトベースのボンゴレ)
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2015.04.03 (金)  曇り

 6日(月)の始業に向けての会議日。国語科も顔を揃えて、新メンバーでの初教科会を開催したり、初おやつを分け合ったりする(笑)。授業に向けての打ち合わせや準備も進んで、いよいよ新学期が始動する雰囲気である。11918歩。

2015.04.02 (木)  晴れ

 開始日の昨日と会議日の明日に挟まれた今日は何もないノンビリとした一日。明日の会議に備えて資料を用意したりして過ごす。11336歩。
(↓仕事の合間に撮影した日比谷の桜)
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2015.04.01 (水)  晴れ

 新年度の開始日。新しい仲間を3名お迎えする。ちなみに、この年齢になると色々な学校に知り合いがいたりするので、「○○先生がよろしくとのことでした~」といった伝言をたくさんいただくことになる。元同僚の先生方は覚えているのであるが、中には元教え子が先生になっていたりして、その先生(元生徒…)からの伝言だったりすると、容易に顔が思い浮かんで来なかったりするのである。やれやれ…。
 私の今日の仕事のメインは「合格者数の最終確定」ということで、一日中パソコン(エクセル)と格闘する。卒業させた学年の結果ばかりでなく、それ以前の学年の結果(つまり昨年度の蝋人形たち…)もまとめなければならず、頭が混乱しっぱなしであったが、進路主幹の助けもあって何とか数字が一致してホッとする。ちなみに、今年の現役進学率は55%程度で、ここ数年では最低である。特に、女子の現役進学率の低さは驚異的?かも。望みが高いのか、実力が低いのか…笑。来年の今ごろはどうなっているのだろうか?9760歩。
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